でんちゅう随想録

夜のような虚無が好き。

友情は冬枯れて

 中学の3年間、クラスがずっと一緒だった子がいました。仮称Sは、バスケ部員だったことからも、とても活力旺盛で、元気で明るいスポーツ人間の鏡みたいな人物でした。

 そして、高校の志望先が唯一一緒だということを互いに知ったことから、ただのクラスメイトからともに受験勉強に励む同志になりました。そして2人とも無事に合格して、同じ高校に通うことになりました。

 偶然高校でも同じクラスになったことから、登下校を一緒にするようにもなりました。そしてSは恋愛中毒というか、彼氏を回転寿司感覚でとっかえひっかえする子だったので、会うたんびにかわる彼氏への愚痴や、相談とかも聞いたりしていました。当時のことを想起してみれば、互いにが互いに恋路はなく、まっさらな友情しかなかったと思います。

 思春期渦中の人から見れば、異性の友情なんて信じられなかったらしく、よく学校では付き合ってるなんだの揶揄されていました。

 よく恋は盲目という表現がありますけれどしかし、人を盲目にさせるのは恋だけではなかったたようで。

 夏休み、短期で一緒にバイトをするようになりました。学校やプライベートでは一緒に過ごすことは多々ありましたが、同じ職環境でいるというのは初めてで、これが友情が。というよりは一方的な自分の中の友情が微塵以上に破壊される引き金になりました。

 自分でいうのもどうかと思いますが、それがたとえ「バイト」であれ「派遣」であれ、おなじ「仕事」としてみます。というか、自己責任が発生しているものはすべて仕事という大きなジャンルの中の枠組みとして自分は判断しているので、バイトでも常識的な秩序を持って臨みます。

 遅刻しない、無断欠勤しない。その程度のことですけれど。

 しかしながらSは自分が思っていたよりも自我が強くて、バイトの研修もサボったり、仕事を始めてもずっと女の子同士でしゃべっていたり。自分はそのころ「上司に嫌われたら終わる」というのを第一に考えていたので、ひたすらそのバイト先での厨房長と一緒に仕事をしました。

 当然喋ってばかりのSは上司から快く思われなくなって、いやがらせとかわなかったですが、明確な態度にあらわされていました。

 Sもそれには気づいていて、その不満を自分に言うようになりました。そこで自分は、今まで構成していた友情が急速に冷えていくのを実感しました。

 Sが言う言葉一つ一つ、愚痴から悩み事まで遠い世界の出来事であるように、聞き流すようになりました。

 夏休みを終えてから、一緒に登下校をすることもなくなり、それから一度も会うことなく学校を転学しました。

 今でもやり取りは一切していなくて、転学する直前になんで言ってくれなかったのか、みたいな電話を一回だけして、電話口の向こうで泣かれもしましたが、何も感じなかった。

 5年間の友情も、たった一つのことで瓦解してしまうことを学び、そしてそのたった一つのことで揺らいでしまう自分の友情論の冷たさが嫌になって、それから自ら友人を作ることはなくなりました。

 そこから人間不信まで避行しましたが、今はたくさんの出会いを経て、人間不信になるようなことはなくなりました。女性恐怖症も完治しました。

 今もSは男をあら捜ししているのでしょうか。わかりませんが、少なくとも自分の人生のキーポイントとなってくれたSに、少しだけの感謝とミリ単位の罪悪感を、ここに記す。

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